私ははじめ、ちっぽけな田舎の喫茶店にところ狭しとカウント・ベイシーの写真が貼ってあるような店だろうと
勝手に想像していました。ところが蔵のような建物といい、雰囲気のある入り口付近といい、なかなか期待が
できそうな感じでした。
店に入って暫く聞いていましたが、正直言うとこの時点では「ふーん」という感じでした。ところが、座って
1時間以上聞いているうちにビッグバンドがかかるとその大音響にやられてしまいました。最近ではビッグバンド
の楽しさは音の暴力とも言えるあの大音響にあると思っていますが、まだビッグバンドを聞いたことがなかった
私はあっけなく心を奪われてしまいました。レコードでここまでの音が出るとは!。ただ大きいだけでなく、
空気の振動が伝わってきて、目をつぶっていると本当にそこで人がひいているのではないかと思わせるような
臨場感があります。これですっかり興奮してしまい、旅行の帰りに再度寄ることにしました。
しかし、驚いたのはこれだけではありません。帰りに寄った時は夜8時頃にベイシーに入り、2時間ほど
ねばっていました。客は私達だけです。ちょうどケニー・ドーハムのクワイエット・ケニーというLPがかかっている
最中でした。目をつぶっていたのですが、目を開けたら、スピーカーの横にあるドラムをマスターが曲に合わせて
叩いていたのです。レコードの音が生のドラムの音と溶け合って何の違和感も無かったことに心底驚きました。
単に音が大きいだけじゃないの?と思われるかも知れませんが、音が大きいだけのジャズ喫茶なら都内にも
あります。旅行から帰って吉祥寺のジャズ喫茶に行ったのですが、あそこまでの臨場感は感じられません
でした。
今回、この雑文を書くにあたりベイシーに関する情報をインターネットで探したところ、ベイシーでライブを行った
ミュージシャンが、レコードの音を本当の音と間違えたという伝説が載っていました。自分の体験が無ければ
「そんな馬鹿な」としか思わなかったでしょうが、今は素直に受け容れてしまいます。
それにしてもいいなあJBL(カミさん警戒)。