2002年夏訪問記


子供が産まれたら行けなくなるとの焦燥感に駆られ、カミさんが里帰りしているのをいいことに8月末にベイシーに

行って来ました。私が焦るのには訳があります。初めてベイシーに行った時、「東京から来ました」と伝えると

「東京じゃ門前仲町のタカノがいいよ」とマスターが教えてくれました。帰ってすぐに行けば良かったのですが、

いつでも行けるとの甘えから行きませんでした。そうこうするうちにタカノは閉店してしまいました。ベイシーで同じ

轍を踏みたくないので焦ったのです。

ただ行くだけではつまらないので、前から目をつけていた栗駒山登山と絡めて行ってきました。その日は6:04の

新幹線で東京から岩手に向かいます。栗駒登山を無事に終え、須川高原温泉で温泉につかり、一関に着いた

のは午後4時過ぎです。それからベイシーに向かいます。昨年も来ていますので、そんなに懐かしさは感じません

が、店が開いているかドキドキします。ああ、良かった。開いていました。店の様子は変わっていません。マスター

の無愛想さもあいかわらずです。昨年は落としていたヒゲも伸びています。マスター達がいる席には今日も若い

女性がおり、話をしています。いつ来ても不思議なことに、マスターの回りには若い女性がいます。どのような

仕組みなのか分りませんが、それもジャズの不健全さに似合います。お客さんは私を入れて4人です。土曜の

せいか結構出入りがあります。会社帰りと思しきワイシャツ姿のサラリーマンもいます。会社の帰りにベイシーに

立ち寄れるなんて羨ましいことこの上ありません。今晩はこの街に泊まることにしていますので、帰りの電車の

心配もありません。

3時間ジャズにひたります。ウィスキーを飲んで少しだけ酔っ払い幸せな気分です。今回はバディ・リッチのドラム

ソロとアート・ペッパーにやられました。ここ以外のお店でバディ・リッチを聞いたことがありません。やはりマスター

がドラマー出身だからでしょう。「これでも聞け!」といわんばかりのドラムソロに、こちらも「参りました」という気に

なりました。考えると、私がベイシーに惹かれるのは音の良さもさることながら、その選曲にあることに思い到り

ました。さすがに全てが自分に合うわけではありませんが、いく度に「これはいいなあ」というものが聞けるため

です。ようやくカウント・ベイシーがかかったので、それを聞いてから店を出ました。

今回はマスターの元気が伝わってきたのが収穫でした。前は破れていたシートも全て張り替えられ(もう限界だっ

ただけかもしれませんが)、店のコーヒーカップも新たにおみやげとして売り出されていました。少なくともマスター

が店に対して熱意を失っていないことが分ったのは収穫でした。また来た時もベイシーはいつものようにジャズを

流していることでしょう。(2002.9.8)